1. ホーム
  2. 等温増幅

image

DNA 等温増幅 (Isothermal Amplification)

ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は最もよく知られている特異的 DNA 増幅方法です。PCR では変性(1 本鎖 DNA への乖離)、アニーリング、伸長の 3 つをそれぞれ異なる温度で繰り返しサイクル反応することにより DNA を増幅します。PCR 以外にも DNA 増幅方法がありますが、特に一定温度で行われる方法は「等温増幅」と呼ばれています。等温増幅には幾つかの方法がありますが、共通する特長として、反応速度が速いこと、それにサーマルサイクラーのような特別な機器を必要としないことが挙げられます。以下に代表的な等温増幅法とそれらの原理・特長を記します。

 
代表的な DNA 等温増幅法:
image   image   image
         
image   image   image

 

 

1) Loop-mediated isothermal amplification (LAMP)
 

・反応温度:65 ℃

 

・ターゲットサイズ:<250 nt

 

・増幅産物:長鎖(>20 kb)、コンカテマー(ターゲットリピート)

 

・検出方法:目視、Laterral flow、ゲル、濁度

 

 

 

ターゲット遺伝子中の 6-8 つの特異的領域に対して 4-6 つのプライマーをデザイン、鎖置換反応を利用して一定温度(約65℃)で特異的 DNA 増幅を行います。さらに 15-60 分間で増幅が完了します。

 

また、既存の核酸検出方法に比べて、増幅産物の検出が容易なことも LAMP の特長です。反応中に増幅が行われると、ピロリン酸マグネシウムが生成されて白濁するため、目視で増幅を確認できます。あるいはカルセインやヒドロキシナフトールブルーのような指示薬を添加しておくことで、増幅を色の変化として確認可能です。NEB の 2X Colorimetric LAMP Master Mix を使用すれば、さかに分かりやすく、増幅による pH 変化による反応液の色の変化(ピンク→黄色)として確認できます。


LAMP で最も重要なことはプライマーデザインですが、アシストソフトウェアとして PrimerExplorer (Eiken)をお薦めします。検出したDNA/RNA 配列を入力すると、増幅するターゲット領域と F3/B3 および FIP/BIP プライマーが導き出されます。この 4 種類で反応できますが、デザイン次項ステップで LoopF/LoopB プライマーをデザイン・使用することで LAMP 反応効率が向上します。

 

LAMP は増幅や検出のための高価な機器は不要でありながら、高感度かつ短時間で目視確認ができるため、以下のような現場測定に使用されており、またその応用が広がっています。

 

  ・Rapid detection of coronavirus (COVID-19) RNA 

  ・Direct detection of SARS-CoV-2 RNA from Universal Transport Medium

  ・Filariasis in humans and insects

  ・Food and water quality in-field applications

  ・Detection of the Zika virus in human samples

 

 
 
 LAMP の基本原理
image
 LAMPは大きく2つのステップに分かれています。
  1) 増幅テンプレートの合成
  ターゲット領域を挟む形で設計した4種類のプライマーを使用して、両末端にループ構造をもつDNAを合成します。その形状からダンベル構造と呼ばれています。
  2) ターゲット領域の指数関数増幅 
 

ダンベル構造の2つのループにアニールするプライマーを起点としてDNA増幅が起こります。鎖置換型DNAポリメラーゼを使用しているため、反応が進行するごとに同一鎖上に互いに相補的な配列を繰り返す構造の増幅産物が合成されます。さらにタンデム産物中には複数のプライマーアニール部分が存在するため、結果として指数関数的に増幅が起こり、色々なサイズの増幅産物を生じます。

 

 

   
  NEB TV Japan(日本語字幕付き動画)
 

LAMPの基本原理

 

野外や臨床現場におけるカラーメトリック LAMP の応用

 

顧みられない熱帯病

image   image   image
   
  関連製品
 
WarmStart Colorimetric LAMP 2X Master Mix (DNA & RNA)    カラーメトリック LAMP キット
WarmStart LAMP Kit (DNA & RNA)    LAMP キット

Bst DNA Polymerase, Large Fragment    LAMP 法の鍵酵素となる鎖置換型 DNA ポリメラーゼ

Bst 2.0 DNA Polymerase    増幅速度と収量、耐塩性、耐熱性を向上した改良型 Bst
Bst 2.0 WarmStart DNA Polymerase    非特異的増幅を抑制できる WarmStart 仕様の Bst
Bst 3.0 DNA Polymerase    逆転写活性と増幅阻害耐性を向上した改良型 Bst、1 つの酵素で RT-LAMP が可能

 

 

2) Whole Genome Amplification (WGA)
  Multiple Displacement Amplification (MDA)
 

・反応温度:30 ℃

 

・ターゲットサイズ:全ゲノム

 

・増幅産物:長鎖、枝分かれ構造

 

・検出方法:各種

 

 

 

WGA は Multiple Displacement Amplification (MDA) の方法のひとつで、ランダムプライマーと phi29 DNA Polymerase などの鎖置換型 DNA ポリメラーゼを使用して、ゲノム全体を増幅します。通常、ピコグラムからナノグラムオーダーの微量 DNA を数十マイクログラムまで増幅します。貴重な検体由来 DNA や超微量 DNA、シングルセル解析などに応用されています。環状 DNA を増幅する場合、MDA の 1 つである Rolling Circle Amplification (RCA) と呼ばれる方法が使用される。

 

 

 

補足:Multiple Displacement Amplification (MDA)

 

より詳細に言えば、全ゲノム増幅に使用されている増幅技術が Multiple Displacement Amplification (MDA) である。MDA は phi29 DNA PolymeraseBst DNA Polymerase など、鎖置換活性を有する DNA ポリメラーゼを鍵酵素に使用する。全ゲノム増幅においては、PCR をベースした方法[Degenerate Oligonucleotide PCR (DOP-PCR) や Primer Extension Preamplification (PEP)]に比べて、 MDA が主に使用されている。

 

phi29 DNA Polymerase を使用して MDA を行う場合、高濃度のランダムヘキサマー (10–50 μM) を使用して、30℃ で 1-12 時間の反応をおこなう(インキュベーション時間は必要とする増幅量による)。phi29 は校正機能 (3'→5' エキソヌクレアーゼ活性) を有するため、増幅中のエラー頻度は少ない。ただしプライマー保護のために、ランダムヘキサマーにホスホロジエステル結合 (S化) を入れておく必要がある。また、ピロホスファターゼを添加することにより、反応中に蓄積される増幅バイプロダクト:ピロリン酸 (ポリメラーゼを阻害) を分解、増幅収量を向上できる。MDA の増幅産物は極めて長く (>30 kb)、高度な枝分かれ構造を有する。MDA (WGA) 増幅産物をイルミナ社次世代シーケンス用ライブラリー調製のインプットに使用する場合、物理的断片化もしくは酵素的断片化 (NEBNext Fragmentation System) によって枝分かれ構造が乖離、そのままライブラリー調製ワークフローに使用できる。Nanopore などのロングリード・シーケンスに使用する場合には、T7 Endonuclease I を使用して枝分かれ構造を乖離する。

 

 

 
 

 WGA の基本原理

image

はじめにランダムプライマーが DNA テンプレートにアニール、そこから増幅が開始する。ポリメラーゼによって DNA が伸長、下流の鎖にぶつかったら、それを鎖置換活性で剥がしながら増幅が進行する。結果、ランダムプライマーを起点とした長い DNA が合成される(濃いオレンジ)。さらに合成された DNA 鎖にランダムプライマーがアニール、これを起点として同様な DNA 合成が行われる。結果、枝分かれ構造を持つような DNA が増幅産物として得られる。下流の実験に枝分かれ構造が不要な場合、T7 Endonuclease I で乖離できる。

 

 

   
  関連製品
 

Bst DNA Polymerase, Large Fragment  至適温度 65 ℃の鎖置換型 DNA ポリメラーゼ

Phi29 DNA Polymerase  至適温度 30 ℃の鎖置換型 DNA ポリメラーゼ

 

 

3) Strand displacement amplification (SDA)
  Nicking Endonuclease Amplification Reaction (NEAR)
 

・反応温度:60 ℃

 

・ターゲットサイズ:<100 nt

 

・増幅産物:短鎖、discrete

 

・検出方法:蛍光

 

 

 

2 種類の酵素、鎖置換型DNAポリメラーゼとニッキング酵素を利用して等温でターゲット領域を指数関数的に増幅します。病原微生物の検出など、診療診断によく使用されています。

 

 

 

補足1:DNA Strand Displacement (鎖置換)

 

SDA 法の開発当初は主に Klenow (exo-) DNA polymerase と核酸アナログ (α-thiol dCTP など) が使用されていた。核酸アナログは、合成された DNA 鎖がニッキング酵素によって分解されることを防ぐ。Nt.BstNBI などのニッキング酵素の発見・開発によってSDA がよりシンプルになり、また Bst DNA Polymerase を使用することにより増幅速度向上 (反応時間の短縮) が可能となり、現在の方法に至る。

 

SDA 反応では 4 種類のプライマーが必要である。2 つは outer “bump” primers と呼ばれ、ターゲット領域 (<100 bp) の上流に結合して鎖置換を開始する。もう 2 つは inner primer (図中、SDAF/SDAR) と呼ばれ、ターゲット領域の 5' 側にアニールするための特異的配列に、ニッキング酵素の認識配列 (赤色) を付加しておく。認識配列の外側には、酵素反応の足場となる 4 塩基 (4 dA spacer) を付加しておく (参考論文)。

 

SDA inner primer プライマーは、多くの PCR プライマー用デザインソフトでデザインできる。Bump primer のデザインには LAMP 用プライマーデザインソフト:PrimerExplorer が利用できる。増幅産物は、インターカレーターダイあるいはプローブを使用して、リアルタイムで蛍光検出することができる。

 

 

 

補足2:Nicking Enzyme Amplification Reaction (NEAR)

 

SDA に似た等温増幅法として、Nicking Enzyme Amplification Reaction (NEAR) がある。これは短いターゲット領域を数分間で、高感度に検出できる。詳細は 原著論文 (Van Ness, J et al) および最近のレビュー (Qain, C et al) を参照されたい。

 

 

 
 
 SDA の基本原理

image

SDA 反応では 4 種類のプライマーが必要である。2 つは outer “bump” primers と呼ばれ、ターゲット領域 (<100 bp) の上流に結合して鎖置換を開始する。もう 2 つは inner primer (図中、SDAF/SDAR) と呼ばれ、ターゲット領域の 5' 側にアニールするための特異的配列に、ニッキング酵素の認識配列 (赤色) を付加したものである。これらによりニッキングサイトが導入された2 本鎖 DNA が生成 (左下)、合成の起点基質となる。続いてニッキング酵素がニック導入、その瞬間に 鎖置換と DNA 合成が開始される。このニック導入と合成が瞬間的に繰り返し行われるため、迅速にターゲット領域が増幅される。

 

 

   
  関連製品
 

Bst DNA Polymerase, Large Fragment    至適温度 65 ℃の鎖置換型 DNA ポリメラーゼ

Klenow Fragment (3'→5' exo-)    至適温度 37 ℃の鎖置換型 DNA ポリメラーゼ
Nicking Enzymes    ニッキング酵素

 

 

4) Helicase-dependent amplification (HDA)
 

・反応温度:65℃

 

・ターゲットサイズ:<150 nt

 

・増幅産物:短鎖 (<150 bp)、discrete

 

・検出方法:Lateral flow

 

 

 

好熱性ヘリカーゼと鎖置換型 DNA ポリメラーゼを使用して、65℃の一定温度でターゲット領域を増幅します。ヘリカーゼで 2 本鎖 DNA を乖離するため、また鎖置換活性を持つポリメラーゼを使用するため、PCR のようなサイクル反応を必要とせずに等温反応が可能です。PCR と同様、Forward と Reverse の 2 種類のプライマーを使用します。HDA は NEB で開発された方法であり (原著論文)、FDA 認証の体外診断に使用されています。

 

 
 
 HDA の基本原理

image

 65℃の等温反応中、3 つの反応が同時進行してターゲット領域(70-150 bp)を増幅する

  ・Step 1:ヘリカーゼが 2 本鎖 DNA をほどく

  ・Step 2:プライマーがアニールする

  ・Step 3:鎖置換型 DNA ポリメラーゼが DNA 合成をおこなう

 

 

   
  関連製品
 

IsoAmp II Universal tHDA Kit    HDA キット

 

 

5) Recombinase Polymerase Amplification (RPA)
  Strand-Invasion Based Amplification (SIBA)
 

・反応温度:37 ℃

 

・ターゲットサイズ:<1,000 nt

 

・増幅産物:短鎖、discrete (PCR と同じターゲット領域の産物、タンデムではない)

 

・検出方法:Fluorescence、Lateral flow

 

 

 

RPA ではリコンビナーゼを利用してプライマーを 2 本鎖 DNA に組み込みます。この際、T4 UvsX (リコンビナーゼ)と UvsY タンパク質、1 本鎖結合タンパク質 T4 gp32 (SSB) が結合して D-loop 構造を形成、これを起点として、鎖置換型 DNA ポリメラーゼ (Bsu DNA Polymerase など) によりターゲット領域を増幅します。反応温度は一般的に 37 ℃ で、PCR と同じ対象領域の 2 本鎖 DNA が増幅産物として得られます (~ 1 kb)。RPA は 「等温 PCR」とも呼ばれており、Forward/Reverse プライマーを使用します。さらに長い invasion oligo を使用して、プライマー組み込み効率と増幅効率を向上した方法が SIBA です。両手法とも、増幅できるターゲットサイズは 1 kb 以下です。通常、増幅産物は蛍光プローブを使用して検出します。等温で手軽にできる点がメリットですが、非特異的増幅が発生しやすい点がデメリットです。本手法は医療診断のほか、次世代シーケンス用ライブラリー調製にも応用されています。

 

 

 
 
 RPA の基本原理

image

RPA ではリコンビナーゼ、1 本鎖 DNA 結合タンパク質、鎖置換 DNA ポリメラーゼを使用する。PCR と同じように、ターゲット領域が増幅される (<1 kb)。

 

 

   
  関連製品
 

Bsu DNA Polymerase, Large Fragment    至適温度 37 ℃の鎖置換型 DNA ポリメラーゼ

T4 Gene 32 Protein    至適温度 37 ℃の鎖置換型 DNA ポリメラーゼ


 

6)  Nucleic Acid Sequences Based Amplification (NASBA)
  Transcription Mediated Amplification (TMA)
 

・反応温度:40 - 55 ℃

 

・ターゲットサイズ:<150 nt

 

・増幅産物:短鎖、discrete (PCR と同じターゲット領域の産物、タンデムではない)

 

・検出方法:目視、Laterral flow、ゲル、濁度

 

 

 

NASBA と TMA は RNA から cDNA を合成して、そのまま cDNA を増幅します。一連の反応は 40 - 55 ℃ の等温で行います。基本的には RNA を出発材料としますが、DNA も使用可能です。ターゲット領域に特異的なプライマーを使用しますが、この際、プライマーの 5' 末端に T7 プロモーター配列を付加しておきます。これを起点にして、逆転写酵素によりターゲット RNA から cDNA が合成されます。続いて反応液に含まれるタンパク質のRNase H活性 により (TMA では逆転写酵素の RNase H 活性により)、DNA-RNA ハイブリッド中の RNA 鎖が分解されます。さらに Reverse プライマー (P2) により第 2 鎖 DNA が合成されます。この 2 本鎖 DNA をテンプレートとして、 T7 RNA polymerase が RNA を合成、はじめのステップから再度合成が開始、結果として指数関数的に増幅が行われます。体外診断などに使用されています。

 

 

 

補足:検出方法

 

NASBA では、T7 RNA ポリメラーゼの高い活性により、増幅産物の大部分が RNA となる。そのため 1 本鎖用の検出方法を用いることが多く、Molecular Beacon やハイブリダイゼーション・プローブが使用される。NASBA と TMA は極めて高感度であるため、血液検体を用いた感染症スクリーニングなどの体外診断に広く用いられている。

 

 

 
 
 NASBA の基本原理

image

40 - 55 ℃の等温反応中、複数の反応が同時進行して、RNA からターゲット領域を指数関数的に増幅する。

  ・Step 1:RNA のターゲット領域に P1 プライマーがアニール

  ・Step 2:逆転写酵素が cDNA を合成

  ・Step 3:RNase H 活性により RNA 鎖を分解

  ・Step 4:逆転写酵素が P2 プライマーから 第 2 鎖 cDNA を合成

  ・Step 5:T7 RNA ポリメラーゼがターゲット領域の 2 本鎖 DNA から RNA を合成

  ・Step 6:Step 1 に戻る。結果としてターゲット領域が指数関数的に増幅される。

 

 

   
  関連製品
 

AMV Reverse Transcriptase    逆転写酵素

Hi-T7 RNA Polymerase (High Concentration)    T7 RNA ポリメラーゼ (高濃度)
T7 RNA Polymerase    T7 RNA ポリメラーゼ
Thermostable RNase H    ニッキング酵素

 

 

 

本製品に関するご質問は下記テクニカルサポートまでお問い合わせください。

Tel : 0120-963-650 (フリーダイアル)、03-5669-6195

製品に関するお問い合わせ